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2013年9月6日金曜日

微恙

微恙あり。

荷風の日記にしばしば出てくる言葉。

恙なし、とは言うが、「微恙」は今では殆んど使われない。


微恙あって、要するに軽い風邪をひいて、本を読む気がしない。半日ベッドにぼんやり横たわり、音楽を聴く。

かつてよく馴染みいまではあまりきかなくなったものを、なぜか選んで。




二つのラルゴ(Bach'sPiano Concerto No. 5, in F Minor BWV 1056 2nd)

ーー最初に聴いたグレン・グールドの演奏(中学二年生のとき)。このラルゴになりよりも惹きつけられて、楽譜に音を拾ってみたことがある。そんなことをしたのは、マタイのコラールとこの二つだけ。それまではロシア民謡、そしてシューベルトの歌曲の少年だった、--と断言すれば嘘になるが、熱狂したのは、これらだけだったというのはほぼそれに近い。



マリア・ジョアン・ピレシュも、この箇所だけでは中途半端で演奏しにくいはずなのに、こうやってアンコールに選んで際立った演奏をしている、あたかもグールドへのオマージュのようにして。