(社会保障の給付と負担の現状と国際比較 厚生労働省2009) |
この図から、社会保障給付金の国民所得比率が西欧先進諸国に比べてひどく低いのが分かる。かつて80年代には「日本は世界で唯一成功した社会主義国家」で「格差が少ない平等な国」だなどと呼ばれたことのある日本のなんたる無惨さ! 日本の現状は、「自由主義」、「実力主義」のアングロサクソン国並である。とくに福祉(生活介護)などがひどく低レベルなのだから、ミクロ的には、公衆から文句がでるのは当たり前だ。
岩井克人は次のように言っているが(参照:「見えざる手(Invisible Hand)」と「消費税」)、日本はすでに英米型ということになる。
消費税問題は、日本経済の形を決めるビジョンの問題。北欧型=高賃金、高福祉、高生産性か。英米型=低賃金、自助努力、労働者の生産性期待せずか。日本は岐路にある。
(先進国で比較する日本の税収と構成比率) |
財政赤字がとんでもないことになったのは、90年代以降、超少子高齢化社会への急激な変貌が明らかだったにもかかわらずーー「二十一世紀は灰色の世界…働かない老人がいっぱいいつまでも生きておって」渡辺美智雄1986ーー、税収が低いままに抑えられてきたのと、「失われた20年」の経済低迷、そして国民の将来への先送り気質などのせいだろう。
いずれにせよ、ここまで財政が悪化してしまえば、いまさら社会保障制度の充実といっても遅いという見解もあるだろう。だが個別に文句をいう手合いを非難する筋合いは誰にもない。たとえば生活保護費の増は避けがたい。消費税増も、たしかにミクロ的には貧困者たちに打撃を与えるに相違ないので、庶民的正義派の「左翼」や「リベラル」のように、いつまでも反対しておればよろしい。
負担の配分をしようとする時、今生きている人たちの間でしようとしても、い ろいろ文句が出て調整できないので、まだ生まれていない、だから文句も言えない将来世代に負担を押しつけることをやってきたわけです。(池尾和人 大崎貞和)ーー野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部2011ーー二十一世紀の歴史の退行と家族、あるいは社会保障)
いずれにせよ、ここまで財政が悪化してしまえば、いまさら社会保障制度の充実といっても遅いという見解もあるだろう。だが個別に文句をいう手合いを非難する筋合いは誰にもない。たとえば生活保護費の増は避けがたい。消費税増も、たしかにミクロ的には貧困者たちに打撃を与えるに相違ないので、庶民的正義派の「左翼」や「リベラル」のように、いつまでも反対しておればよろしい。
(財務省) |
…………
で、「左翼」のみなさんが主張するように、消費税増反対して、社会保障費給付金を今より充実させたる主張を続けたらいい。カネがどこから来るのかしらないが。
「いのちとくらし」事務局長さんのなんという素晴らしいツイート!
いや彼らだけがまったく理解不能の「奇矯さ」をもっているのではない、ここでご本尊のおでましを願うことにしよう。
きっと民主党のかけごえばかりの宣言、《ムダの削減により16.8兆円を捻出する》などというマニフェストをしつつの数千億円しか減らせなかった軟弱ぶりではなく、実現性のある提言がなされることであろう、やはり共産党はスバラシ~イ!
だがムダづかいを減らせるのはこの中からだけだ、じっくりみておこう。「その他」なんてぜんぶなくしちゃったらどうだい? ところで、それでも単年度の40兆円規模の財政赤字さえ埋まらないのだがどうしたもんだろう? ほかに1000兆円相当の累積赤字があってその利子支払い費だってバカにならないのだけれど。
で、「左翼」のみなさんが主張するように、消費税増反対して、社会保障費給付金を今より充実させたる主張を続けたらいい。カネがどこから来るのかしらないが。
「いのちとくらし」事務局長さんのなんという素晴らしいツイート!
河添 誠@kawazoemakoto
・「消費税増税で低所得層に打撃になるのは問題だと思うけれど、今の日本の財政では云々」という人へ。前段の「低所得層への打撃」だけで、消費税増税に反対するのに十分な根拠になるはず。なぜ、財政を理由に低所得層の生活に打撃になるような増税が正当化されるのか?この問いにだれも答えない。
・「消費税増税にはさまざまな問題がありますが、財政の厳しい状況では仕方ないですね」と、「物わかりよく」言ってみせる人たち。低所得層の生活が破壊され、貧困が拡大する最大の政策が遂行されるときにすら反対しないのかね?まったく理解不能。
まだ若い「ほっとプラス」代表理事さんだって負けてはいない!
藤田孝典@fujitatakanori:
・みんなが社会手当を受けたら、国の財源がなくなるという人々がいる。それはウソ。それなら欧州の国々はとっくに破綻している。
・ 財源が足りないという理由だけで、国民の生存権や社会権を剥奪していいなら、法秩序は崩壊する。
いや彼らだけがまったく理解不能の「奇矯さ」をもっているのではない、ここでご本尊のおでましを願うことにしよう。
日本共産党は、消費税増税に断固反対するとともに、消費税を増税しなくても、社会保障の拡充と財政再建のための財源をしめした「経済提言」の実現をめざしています。巨大開発などムダづかいの見直しや、大企業・大金持ちに応分の負担を求める税制改革こそ進めるべきです。国民の所得を増やして日本経済を立て直せば、税収も増やすことができます。(「赤旗」 2014年3月24日(月))
きっと民主党のかけごえばかりの宣言、《ムダの削減により16.8兆円を捻出する》などというマニフェストをしつつの数千億円しか減らせなかった軟弱ぶりではなく、実現性のある提言がなされることであろう、やはり共産党はスバラシ~イ!
だがムダづかいを減らせるのはこの中からだけだ、じっくりみておこう。「その他」なんてぜんぶなくしちゃったらどうだい? ところで、それでも単年度の40兆円規模の財政赤字さえ埋まらないのだがどうしたもんだろう? ほかに1000兆円相当の累積赤字があってその利子支払い費だってバカにならないのだけれど。
小黒 そうですね。その視点は重要で、公務員人件費、議員の歳費の効率化に限らず、行政一般の効率化、すなわちムダの削減に終わりはなく、不断の見なおしを続けていかなければならないでしょう。実際、政府は、最近の「行政事業レビュー」という事業の見直し・効率化の取り組みをはじめ、ムダの削減を常に行っています。
しかし、多くの人がイメージするほど日本の政府支出は水ぶくれしているわけではなく、社会保障以外の政策的歳出については、すでにかなりスリム化してきているのが現状です。
「ムダが多い」と言うのは簡単ですが、ムダと呼ばれているものが、じつは自分が日々使っている道路であったり、自分の子どもが通っている学校の先生の給料であるかもしれませんないのです。
なかには、だれの目にもムダな事業もあるでしょうが、そうした事業は金額的にはそう多くないのです。
―― たしかに、全体の割合としてはそれほど多くないというのは、逐一見ていかないとわからなかったですね。とにかく国債と社会保障が大きすぎるというのはよくわかりました。
小黒 前政権の民主党も、ムダの削減などにより16.8兆円を捻出するとマニフェストでうたいましたが、実際、ただちに壁につきあたり、鳴り物入りの事業仕分けでさえ、捻出できたのは数千億円にとどまっています。
「節約してよ!」という気持ちはたいへんよくわかるのですが、仮に「その他」の30.9兆円の「その他」を全て削減しても、40兆円近い借金を無くすことはできません。
―― じゃあ、どうしたらいいんですか???
小黒 兆円単位で歳出を削減するためには、社会保障費に手をつけるしかないのが現状です。(小黒一正「どうして歳出減らせないの?」――30代のための財政入門【7】ーー「日本の財政破綻シナリオ」より)
さてここで敬愛すべき経済学者野口悠紀雄氏の2013年11月5日の「金利上昇がもたらす、悪夢のシナリオ」から図を付記しておこう。幸い今のところ国債の金利上昇は起こっていず、むしろ逆方向の「不可解な現象」が起こっているのは、「アベノミクスによる税収増と国債利払い増」にて見たが。
2%金利なら国債利払い額だけで10年後には今のレベルの税収の半分、金利4%なってしまったら税収はすべて金利支払いとなってしまう。日本の今の国債がすぐさま4%の金利になるとは考えにくいがーー仮に金利が高くなっても、新規発行分と借り換え分のみに適用されるため、トータルの金利上昇はゆっくり進むーー、アベノミクスによりインフレが過熱してしまったり、財政破綻へのシナリオの悪循環が始まってしまえば、将来的には充分ありうる。世界の10年国債金利(2012.5)は次の通り。
(野口悠紀雄 金利上昇がもたらす、悪夢のシナリオ) |
さて話題を変えよう。
厚生労働省は、〈きみ〉たちの期待に沿うよう、現状投影ではなく、改善の方向で「社会保障に係る費用の将来推計について」という資料を提示しているじゃないか、メデタシ、メデタシ!
(厚生労働省) |
2012年→2025年に社会保障費給付金が約40兆円増える推計になっている。そのうち、介護は倍増以上の11兆円。医療費だって35.1兆円→54兆円で、20兆円弱の伸び(後期高齢者が増えるという想定もあるのだろうが)、なんと5割増である。
社会保障費給付金40兆円増というのは、消費税1ポイントが、約2.5兆円だから、13年間で消費税16%相当のカネが必要なことになる。きっとアベノミクスの成功で、税収がバブル期ほどまでに増え、消費税増などしなくてもまかなえるという想定なんだろう、「左翼」のみなさんは。いやいや、上の一般会計税収の推移のグラフによれば、バブル期の最高税収は60兆円ほどだから、その最高時の税収でも足りないわけで、すなわちバブル期以上の税収を期待され、消費税増反対を唱えられるのかもしれない。
ところで毎年1%労働人口が減っていく国でどうやって目覚しい経済成長するんだろ? 共産党は移民反対だったな。とすれば、女性が輝く社会!、女性労働力のいっそうの拡充を! ってヤツだろ?
アベノミクスによる税収増と国債利払い増 |
あまりにも無責任だって? 元日銀理事の早川英男氏の「戯言」などほうっておけばよろしい、責任あふれる「左翼」のみなさんにとっては!
で、こういうことを書いて何がいいたいわけでもない。
ただ、最近ようやくわかって来たのは、「左翼」のみなさんは財政破綻を無意識的に願っていて、旧ソ連の崩壊後のように、平均寿命が急激に低下して、少子高齢化が革命的に是正されることではないか、ーーなどという錯覚にわたくしは閉じ篭りがちなことだ。ああ、なんというハシタナイ錯覚! 彼らはそんな冷酷でも無責任でもない人種にきまっている! とすればただの経済音痴のマヌケなのだろうか……いやマヌケなどと呼ぶシツレイなことをわたくしはけっして書かないタイプである、ただひどく近視眼な人たちなだけであろう、そして近視眼はかならずしも悪いことではない。
《偉大な映画作家は、やはりみんな近眼なのだ。フォードも、フィリッツ・ラングも、そしてあなたも(笑)》(蓮實重彦 ヴェンダースとの対話『光をめぐって』所収)。そして、ゴダール、アンゲロプロス、ビクトル・エリセ……偉大なる日本の庶民派「左翼」も!
しかもラカンを変奏させれば、最も近視眼なひとは最も遠方を見ることができるのかもしれない。
《要するに、私たちのもっとも近くにあるものが、私たちのまったくの外部にあるのです。ここで問題となっていることを示すために「外密extime」という語を使うべきでしょう。》(Lacan S16)
共産党のお方のヒドイ近視眼は反転して、理論経済学者たちのほどよい遠方とは訳が違う「至高」の遠方を垣間見ることさえできるのではないか?
(高齢化社会対策の劇薬) |
劇薬服用するのがイヤだったら、大和総研の「DIR30年プロジェクト「超高齢日本の30年展望」」(2013)によれば、消費税欧州諸国並にして、社会保障費を3割程度削減するしか他に道がないらしい。総額3割だったら、生活保護費はどうしても増すとするとしたら、年金や医療費は3割以上カットということになる。
だが、これだって高齢者どうやって生活するんだろ? 家族のあり方変えなくちゃいけないんだろうな。きっと真摯な「左翼」のみなさんがすでに、その近視眼を「遠近法的に倒錯」させて考えてくださっておられるだろう。彼らはヴェンダースやラカン的だけでなく、スピノザ的でもあるのだ!
社会保障制度全体の財源に占める公費負担割合を現在のまま一定とする前提で試算すると、代替率 82.4%を維持した場合、 2030 年頃でも 20%程度の消費税率でないと中央・地方政府の基礎的財政収支は均衡せず 、 社会保険料率は現在の 1.5 倍必要になる。 さらに、その状況を 2050 年頃まで延伸すると消費税率は 25%を超え、 社会保険料率は現在の約 2 倍となる。 これは、 現在 40%に満たない国民負担率51を 70%超に引き上げるということに相当する (なお 2011 年度の財政赤字を含む潜在的国民負担率は 48.6%)。代表的な福祉国家であるスウェーデンの現在の国民負担率が 62.5%(2009 年、潜在的国民負担率は 63.9%)であることなどに照らして、国民負担率 70%への道を辿るということは、日本の国家像や国民意識という点で考えにくいのではないか。
しかも、ここで消費税率 25%とは、かなり控えめにみた税率である。①医療や介護の物価は一般物価よりも上昇率が高いこと、②医療の高度化によって医療需要は実質的に拡大するトレンドを持つこと、③介護サービスの供給不足を解消するために介護報酬の引上げが求められる可能性が高いこと、④高い消費税率になれば軽減税率が導入される可能性があること、⑤社会保険料の増嵩を少しでも避けるために財源を保険料から税にシフトさせる公算が大きいこと――などの諸点を考慮すると、消費税率は早い段階でゆうに 30%を超えることになるだろう。
では、 代替率を抑制していけばどうだろうか。(……) 代替率を 1割抑制する程度では大きな効果は得られない。 だが、 代替率を現在から 3 割程度抑制できれば、状況はかなり違ってくる。年金・高齢者医療・介護に関する賃金で測った実質給付を今より 3割減らして平均代替率を 57.7%とすれば、 2030 年頃までは消費税率を 10%台半ばに抑制し、 2050年時点でも消費税率を代替率一定ケースの約 7 割に抑制できる。上で述べた①~⑤の要因を考えると、代替率 3 割引下げとは、今後の 30 年程度をかけて現在の大陸欧州並みの付加価値税率を目指していくシナリオといえよう。代替率 3 割の引下げは、現在の年金水準の高さや高齢者医療の自己負担割合の低さなどを考えると、実現不可能ではないと考えられる。
年金給付額は、物価スライド制やめて、消費税増スライドやめて、そして2%の経済成長によるインフレとなったら、実質は3割減ではなく、半額近くになっていく筈。そのときこそ共産党の真の提言のお出ましだ! 新しいアソシエーション、新しい家族! 未来は彼らの提言にかかっている!
もし連合した協同組合組織諸団体(uninted co-operative societies)が共同のプランにもとづいて全国的生産を調整し、かくてそれを諸団体のコントロールの下におき、資本制生産の宿命である不断の無政府主と周期的変動を終えさせるとすれば、諸君、それは共産主義、“可能なる”共産主義以外の何であろう。(マルクス『フランスの内乱』)
実際、たとえば2016年より? は無理か、では2017年正月より毎年2%消費税増、2020年代半ばまでに徐々に社会保障費給付金3割カット、経済成長2%継続、そしてその間に国債金利が上昇しないことを神さまに祈るーー祈るのは神さまじゃなくマルクスやレーニンでもいいさ--このくらいしかないんじゃあないですか? 真のラディカル共産党さんよ、(そんな人はいないのは分かってるがね)、あなたたちの偉大なる「「経済提言」は? さて、どうでしょう? そこに新たなる「家族」案が入ってたら、それが真のマルクス的な提言じゃあないかしら?