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2014年4月1日火曜日

四月朔

炎熱限りなし。書斎の寒暖計三十九度を指し示す。例年をはるかに上回る異常な暑さに襲われ忍難し。本日早朝米国から訪れし近縁の女が帰国せしが空港まで送るのは妻にまかせ門前にて惜別の挨拶を送るのみ。名残り惜しきかな。《けやきの木の小路を/よこぎる女のひとの/またのはこびの/青白い/終りを》(西脇順三郎) 昨深更奇事あり。

《余一睡して後厠に徃かむとて廊下に出で、過つて百合子の臥したる室の襖を開くに、百合子は褥中に在りて新聞をよみ居たり。家人は眠りの最中にて楼内寂として音なし。この後の事はこゝに記しがたし。》(永井荷風『断腸亭日記巻之五大正十年歳次辛酉 』)



                  (荒木経惟)


ナオミさんが先頭で乗り込む。鉄パイプのタラップを二段ずつあがるナオミさんの、膝からぐっと太くなる腿の奥に、半透明な布をまといつかせ性器のぼってりした肉ひだが睾丸のようにつき出しているのが見えた。地面からの照りかえしも強い、熱帯の晴れわたった高い空のもと、僕の頭はクラクラした。(大江健三郎「グルート島のレントゲン画法」『いかに木を殺すか』所収)



《丘のうなじがまるで光つたやうではないか/灌木の葉がいつせいにひるがへつたにすぎないのに》(大岡信)




                (Bibiana Nwobilo


《水べを渉る鷭の声に変化した女の声を聴く》(吉岡実)