ヒスおこしちゃったのね
めぐみちゃんのお友だちから
おてがみもらってるの
なんどもなんども
なりすましは濡れ衣だってね
嘘ってのはころがってるのね
キッチンなんかにね
玉ねぎ刻んで涙が出ると
思い出すわ
悲しみの理由は
いつもいつも嘘だったって
かくしているような気になれるだけだから
かくしているほんとのことが
むき出しになっちゃうから
「愛ってのはころがってるのね
キッチンなんかにね
玉ねぎ刻んで涙が出ると
思い出すわ
悲しみの理由は
いつもいつも愛だったって
(……)
嘘つくのって好きよ
まだ知らないほんとのことを
知っているような気になれるから
でもほんとのほんとは
一瞬で過ぎ去る
いい匂いみたいに」(谷川俊太郎「真っ白でいるよりも」)
状況がしだいに自分の思い通りにならなくなるにつれ、…ヒステリー性の発作を起こし、次から次へと新しい戦略にとびつく。最初は脅迫したかと思うと、今度は泣き叫び、一体何がどうなっているのか自分にはさっぱりわからないと訴える。だが突然、ふたたびお高くとまった態度をとり、相手を見下す、といったことが繰り返される。要するに彼女は、たがいに矛盾した、さまざまなヒステリー的な仮面を次から次へと被ってみせる。この……女が味わう最後の挫折の瞬間、彼女はもはや中身のない外被にすぎず、一貫して倫理的態度を欠いたてんでばらばらの仮面にすぎない。この瞬間、彼女の魅力は空中に霧散し、われわれに吐き気と嫌悪感だけを残す。その瞬間、われわれの眼には「存在しないものの影以外の何物も」見えない。(ジジェク『斜めから見る』)