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2013年4月18日木曜日


昨夕、小一時間かかる街中まで出て、禁酒中の身でありながら、いささか酒に口をつける。といっても麦酒一缶に赤葡萄酒二グラスほど。カロリー制限もあるのだが、食事は好物の山羊のチーズに香り高い鴨料理。尿酸値に高い軀には、プリン体摂取を控えるのが好ましいといわれているが(鴨にも多し)、最近の研究では、プリン体は細胞の核の中のDNAに含まれているとのことで、カロリー制限のほうが肝要らしい。

食後しばらく街中を徘徊し深更帰宅すると、足の裏があつい。これはよくない徴候で、慌てて痛風予防薬コルヒチンを服用。毒性の強い薬らしく、ふだんは漢方薬で誤魔化しているのだが、やむえない。ひと月ほど前のように、寝床から三メートル先の書物机にも容易に届かず、十メートル先のトイレには苦行のようにして辿り着くしかないのはかなわぬ。

コルヒチン(colchicine)とはユリ科のイヌサフラン(Colchicum autumnale)の種子や球根に含まれるアルカロイドで、中毒症状は、砒素中毒と類似するらしい。服すれば、咽喉が渇く。ひとによれば嘔吐感もあるらしいが、わたくしの場合は初用時、僅かに吐き気の気配があったのみ。

今朝起出て窓を開けようとすると、足首の関節がほの痛く軽く捻挫したような感覚。以前のように足指先や膝が痛くなるには至っていない。またしばらく節制なり。


昨夜眠れぬままに繙いた荷風の『断膓亭日記』より興趣が湧いた箇所を書き写す。

築地に行きしが元気なく三味線稽古面白からず 
一妓寿美子といへるもの年紀廿一二。容姿人を悩殺す。秋霖霏々として歇まざるを幸ひにして遂に一宿す 
八重福満佐等恰その家に在りて誘ふこと頻なり。寝衣に半纒引きかけ、路地づたひに徃きて一酌す。雪は深更に及んでますます降りしきる。二妓と共に桜木に一宿す 
此妓無毛美開、閨中欷歔すること頗妙 
余宿痾あり汽車の動揺病によからざるを以て辞して行かず 
夜半厠に行くに明月昼の如く、枯れたる秋草の影地上に婆娑たり 
余風労未癒えず服薬横臥すれど、心いら立ちて堪えがたければ、強ひて書を読む


ーー《あなたはよっぽど度胸のないかたですね》


元来あの女はなんだろう。あんな女が世の中にいるものだろうか。女というものは、ああおちついて平気でいられるものだろうか。無教育なのだろうか、大胆なのだろうか。それとも無邪気なのだろうか。要するにいけるところまでいってみなかったから、見当がつかない。思いきってもう少しいってみるとよかった。けれども恐ろしい。別れぎわにあなたは度胸のないかただと言われた時には、びっくりした。二十三年の弱点が一度に露見したような心持ちであった。親でもああうまく言いあてるものではない。(夏目漱石『三四郎』