昨晩、音楽家一家の内輪の演奏会、というかサロン風の催しに招かれて、久しぶりに街まで出る。招待といっても領事館勤めの外交官の奥さんがこの家の娘に歌を習っているらしく、その夫妻のお相手役といったところだ。この女性がか細いソプラノでシューベルトを歌い、そのお愛想をいう羽目になる。
ピアノ三重奏やら四重奏の断片が演奏される。とくに感興なし。禁酒中だが、いささかワインに口をつけたら、今朝、また足が痛い。尿酸値が高く、痛風の発作をおそれる身だ。
招待客の一人の若い乙女が、バッハの無伴奏からサラバンドを弾く。五番のこの曲は、もっとも好む曲のひとつだが、これは目の保養になった。
耳の保養になるには、息遣いの深さが足らず、響きの豊かさに欠ける。もっともカザルスや、その他の名演奏家に比べるのは酷であり、チェロも安物なのだろう。
この曲はヨーヨーマの練習風景の映像ですばらしい演奏があったのだが、あの箇所だけはカザルスにも劣らない。だがいまその映像が見つからないので、やはりカザルスで聴き直そう。