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2014年1月26日日曜日

「無断でコラージュ」


《自分が書く詩に飽きたので、「現代詩年鑑2013」掲載の作品から、無断でコラージュしてみました。》


明るさの気分がする
そこからあふれ出した声が
開始の合図 野はふるえる
かろやかにしんしんと

生きているとふいに出くわす
羊風船 戦争 インポ
きみの無知がかかえて歩く
妄執 贖罪黒糖饅頭

死者も歴史もすっかり古びた
バカヤローのカラ元気
その道すがらにふと
ないものに手を伸ばす

ああどこか遠くで
不可能の音世界は気まぐれの
ずぶ濡れの過ぎ去った場所
天空に逃げる笑顔の花嫁

覚えていますかわたしたちの
えたいの知れない眩暈と出鱈目
ありとあらゆる時代の労働が
不安にざわめきひびわれかわく



◆無断でコラージュ私篇


或る日、花芯が恋しかつた。
「牛乳をお飲みなさい、お薬だと思って。」
私は口をひらいた。私の蒼い咽喉。

私は憶えてゐる。
樹々の奥で、霧の奥で、燈火がともる。
藍色の靄のなかに、下駄の音が続いて
湯屋では賑やかな人声がする。

私達は見てゐる。私達は知つてゐる。
僮たちの瞳も、いつか、動かなくなる。
喪われたあの伝説のなかでのやうに。

忘るべきは、すべて忘れはてにき。
みすぼらしい小さな枕の上に
私の若さは眠つてゐた

屋根の上で雛が鳴いてゐた
澄明な空と冷たい空気
これこそ
私が選んだ季節だ

そこには頬のあはい
まなざしの佳い人があつて
浜風のなでしこのやうであつたが。

いくつもの夢を忘れて
煤けた障子のもとに
その人は
孤り者の火を抱いていた
母よ やるせないその夜をどうして過ごしたのか。

呼んでゐる
誰かが誰かを呼んでゐる
思ひ出のやうに

前掛をして老けた顔の女が立つてゐた