まだ骨格に少年の面影が残こる、整った顔立ちの若い男がこじんまりしたカフェの窓際の片隅に座ってコーヒーのカップを口元にもっていき気取った仕草で視線を窓の外にやっている。カフェで働くぽっちゃりした血色のよい少女が、彼をみつめる。「あの人なの……」と、仲間の少女に呟く。「あら、(なになに)ちゃん、ああいったタイプなの」と、彼女は声を潜めずに最初の少女に応じる。少女は薔薇色の頬をさらに赤くする。
若い男は見つめられていることを意識して、したがって、知らない振りをして、煙草を咥える。私は傍らの席でその様子を眺め、あれでは女を誘うのに難儀する、と自らの苦い記憶を反芻する。